■旅行記 ”日本一周旅行” 10日目 : オアシス再び  (1996.08.17 Sat)

 昨日までの悪夢のような雨と寒さから開放され、昼過ぎまでごろごろしていた。親戚のおばちゃんも僕を起こしたり、何かに駆り立てたりなどせず自由にさせてくれた。僕は本当に幸せな気分でのんびりと過ごし、10日ではなく1ヶ月以上も前に実家を離れ、1週以上もこの家にお世話になっているような気さえした。
 それに天気も良くて、その暖かさがとても気持ちよかったほどだった。もちろん関東のような蒸し暑さはないし、昨日までのような寒さもない。窓を開けて日差しや風や音を感じたり、ちょっと庭先に出てみたり、外から戻ればゆっくりとおばちゃんと話をしたりと、一日の大半を鳥のように自由に過ごした。
 しかし昨日、ここへ帰って来る直前の事を思い出すと、ちょっと心が痛む。それこそまさに「人間万事塞翁が馬」であるけれど、天気が回復し、肉体的にも精神的にも元気になり、意気揚々と札幌市内に入ってすぐのことだった。何を隠そう、警察に捕まってしまったのである。
 スピード違反かと思ったら、「信号無視」と言われて唖然とした。幹線道路同士が交差する広い交差点で、信号が赤に変わりそうになるところをそのまま勢い良く走り抜けたのだが、それでも信号が赤になってからなら立派な信号無視になるというのだ。まあ、理屈からしたらそうだけれど、こんな旅行の最中に勘弁してほしいと、やるせない気持ちでいっぱいになった。
 別に、交通量の多い道路でパトカーに追跡され、「そこの青い箱を積んだバイク停まりなさい」とサイレン越しに言われたり、バイクとパトカーが停まった場所を、徐行して通り過ぎる野次馬カーたちの妙な笑顔の連続などは気にならなかったが、何よりもこれからの旅先でもう一度何か失態を冒したら旅が続けられなくなるとか、それ以上に7千円という罰金をどうしようかと、そればかりが気になった。もちろんこれからは、今まで以上に周囲に気を配って走らなければならない。急ぎたいところをそうしなくてはならないので、不便で窮屈でならない。
 しかし罰金については、これはもうどうにもならないので、申し訳ないとは思ったけれど、丁寧に言い訳を書いて実家に送ってしまうことにした。「理由は後で説明しますし、帰ったらきちんと払いますから、期日までに振り込んでおいてください」と。向こうはダメとは言え息子がどうしているかと気になっているところへ、珍しく丁寧に手紙などよこしてと思ったのも束の間、罰金の青切符を手にするわけだから、相手が親とは言え申し訳ない気持ちだった。
 今日、外へ出たのは、その封筒を出しに行くのと、先日、自動車で市内を案内してもらった時に撮った写真を現像すべく市街へ行った程度だった。あとは家のガレージにあった、昔、ここの娘さん−と言っても僕からしたらいいお姉さんだけれど−が、まだ子供が出来る前に乗っていた小さなバイクを、その旦那さんと一緒にいじったりした程度だった。
 のんびりとは言えもちろん心のどこかでは、これからの旅路を思案してはいるけれど、まあ、のんびり行こうじゃないかと、十分に休息を取った本当にくつろげた一日だった。

【走行距離】 本日:50km / 合計:2,857km
北海道札幌市南区

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